
一言で言うなら、すごくがっかりした
いしいしんじの原作小説が大好きで、何度も何度も読んで、これからもきっと読むというくらいに大好きな話の映画化ということで期待していたのだけど、映画と小説は別物だった ミュージカルが嫌いとか絵柄が好みじゃないとか、そんなことはまったくない むしろどちらも好きな部類である だからこそ期待してしまった面もあるのだけど、映画は私が求めるものとは違っていた
もちろん、小説と映画では見せ方が違ってくるというのは了承している 語り手が違うのも、わかりやすさのためならしょうがないかと理解できる ねずみに名前がつくのも、まあしょうがない部類 わかる でもジュゼッペとペチカがかっこ悪くなるのは違うんすよ!! ジュゼッペはタタンとの会話で不安になったりしないし、ペチカは雪道を走ったりしないんだよ! 小説では不安がるねずみのセリフにタタンが「ジュゼッペはわかってるみたいだよ」って笑うじゃん あれだよ ジュゼッペは自分のやることに不安なんて覚えない そこがかっこいいのに、ねずみをペチカ側にまわしたからねずみのセリフをジュゼッペが言うことになっちゃってさ やだ!!!! ペチカもねずみに言われたから気づくんじゃなく、自分で気づくのがかっこよかったのに っていうか語り手変えたおかげで序盤の左きき伏線がなくなっちゃって、そのぶんどっかに足すんじゃなく、最後にくどいほど左ききフラッシュバックって視聴者馬鹿にしすぎでしょうが 大丈夫だよ もっと信じていいよ ジュゼッペがペチカに手紙書いたときに皆左ききなんだこいつって観てたよちゃんと そしてペチカが雪山を運転して医者を呼んでこなけりゃこの若者はたすからなかったろうよって言われるとこがかっこよかったのに、雪山をただ走る女の子になっちゃって、ツイスト親分の「イカれてやがるぜ」が違う意味になっちゃうでしょうが 雪山を走る人間はそりゃイカれてるよ この改変ほんと意味わからんかった なんで?女の子が雪山をハイスピードで車走らせるのは違法だからですかね???ふんふん歌いながら走るペチカより、車ぶっとばすペチカの横でヒエーッ!てなってるツイスト親分のがよっぽど観たかった 犬ホームズをご存じない?男のために車ぶっとばす女のかっこよさを知らんのか めちゃ!くちゃ!観たかった!!!!!!!!!!!
構成ごりごり変えたのが全部マイナスになってたな~と思う 直前に羅小黒戦記2観てたからこそ、視聴者舐めすぎやろってかんじの構成にうんざりした そんなに説明しなくていいんだ……絵でわからせることは可能なんだ お涙ちょうだいのために時系列をいじるな……!直前にもってこなくても覚えてるよ!
あ、ツイスト親分のところはかっこよかったです あそこはエピソード付け足しのなかではとてもよかった でも、ねずみとの出会い方をけずり、序盤のトリツカレっぷりをけずり、ジュゼッペが街の皆から愛されているところをけずり、いくらなんでもけずりすぎやろがい! 「おーいジュゼッペ、トリツカレ男、今度は何にとりつかれたんだい!」がなくなるなんてありうる?!?!?!! 街の皆に愛されているからこそのトリツカレ男 その描写がなければただのクソ迷惑変人になってしまうと思うんですが、そこんとこどうなんすかね…… 語学にトリツカレた時期があったからペチカの言葉わかったんだよ、っての、映画だけでわかるか不安 っていうかペチカに話しかけるときも、原作ジュゼッペはさすがトリツカレ男、一直線にペチカまで進んでいって、って描写があるのに、映画だとこそこそしててさ……ちがうんだよ……ジュゼッペはもっとかっこいい男なんだよ……! レストランでもトリツカレるたびに迷惑かけてるんじゃなく、場合によっては利益を出してたりするんだよ!プラスマイナス関係なく、トリツカレるときにトリツカレる!それがジュゼッペって男なのに!
短い話だし歌うことで映画の尺にするのかな~とふんわり思ってたんだけど、まさかこんなにエピソードけずられるとは思わなかった そういうことならエピソードけずらず、歌わず、そのまま原作をやってほしかった……! ミュージカルは好きだけど、この映画の歌はなんというか物語のリズムを壊すものばかりで、とても悲しかった ミュージカルの歌って一曲ごとに聞き惚れるというか、画面から目を離せなくなるような力があると思うんだけど、曲の強さが足りなさすぎる 歌がへたってこともないと思うんだけど、もっと聞きたいとはまったく思わなかったからとにかく力が足りなかった せっかくのミュージカル、せめて歌に力入れてほしかった!
そしてペチカがタタンとモブを見間違えるのは、なんでじゃい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!って怒り ここは明確に怒り ペチカはこの二年タタンの死を受け入れようと努力していて、それでも心を麻痺させることまでしかできなくて、そんなところにジュゼッペのタタンが現れたからもしかしてってなっちゃったはずでは? そこらのモブにジュゼッペタタンと同じようなことができるはずないんですよ このエピソードのせいでジュゼッペもペチカもかっこ悪くなる あとラスト、じゃがいもスープ全部食わせようとするペチカは解釈違いにもほどがある ペチカは病人にそんな無体を働く女の子じゃないよ……自分のやりたいことだけを押しつけるような女の子じゃない……!
ねずみも一曲歌わせるためか知らんけどだいぶフォーカスしちゃってさ…… なんすか?人気の俳優さんが中の人だから見せ場つくりたかったんすか???それ原作の雰囲気台無しにしてまでやらなきゃいけなかったことですか? ねずみ掘り下げるんならなんで親に捨てられたとこカットしたんだって話ですよ 公園にいた浮浪者もカットだし、ふわっと優しい世界にしちゃったせいでツイスト親分だけよくわからん悪になってしまった ちがうんすよ いしいしんじの世界ってのは善悪ごっちゃで皆ただそこに生きてるってのがかっこいいのに、きれいな面だけお出しされるのはなーーーーんにもわかっちゃねえ!ってぶちぎれ案件ですね
ジュゼッペもシエロも演技自体にはまったく文句ないけど、中の人のために原作いろいろゆがめられたんかな、と思うと憎さが出てしまう 資本主義社会だからしょうがないんすかね 売れるためにはこの俳優たちを前面に出して売るしか道はなかったんすかね……?私はそうは思わないんですけど……
私は本当に原作のジュゼッペとペチカが好きで、かっこいい二人を観に映画館に行ったはずなのに、映画の二人は少しずつかっこ悪さを足されていて、あー……ってがっかりしてしまった もしかしたらこのかっこ悪さこそ恋の醍醐味みたいな監督の趣味があるかもしれんけど、ちょっと私とは恋の解釈もキャラ解釈もちがいますね
物語解釈もキャラ解釈も微妙に合わんな~とはなったんですが、絵づくりはすごく好きでした きっとこの話が大好きで大好きで大好きなトリツカレ男でなければ絶賛しただろうアニメーションでした 色合い、影のつけかた、動き、デフォルメ、全部好き! 特に雪が多角形で空からきらきら降りてくるところ、まるで紙吹雪みたいで、世界が舞台のようで素敵だった 総合的に、脚本や音楽での減点を絵と動きの加点がどうにかするってかんじの映画でした 逆に言えばアニメーションの強さに脚本や音楽が釣り合っていない もっといい映画になる可能性があった あったのにな~……!
パンフレットにいしいしんじ書き下ろし小説があると知ったので、とりあえずパンフ買いに行きます 原作は本当に本当に好きなので!