現パロ恋人シージョセの日常です
シージョセとご飯と春夏秋冬の繰り返しをどれだけ書けばいいのかわかりません
a very merry unbirthday to you!
2016/06/20/pixiv
2018/05/04「幸福百景」発行
春はいちごだ。 いちごってヤツは奇跡の果物で、そのまま食べてもいいしスポンジに生クリームと一緒にぺぺっとのっけただけでもうまいし、ぐつぐつ煮こんだジャムのふわんとした香りはおばあちゃんの鼻歌を思い出すし、もう何したって平均以上のスコアを叩き出す。 もちろんカタチもとってもキュートだ。 ころんとしてて三角で、つぶつぶの種が少し不気味。 鮮やかな赤は砂糖と相性がすごくよくって、てりてり光ったりまろやかにピンクになったりと色のバリエーションもそりゃあ豊かで。 だから、春のケーキはいちごに限る。 フレジェ、タルト、ショートケーキにクリームムース! すべてをいちごの味にしたって、テーブルが華やかになるだけで飽きなんてまったく来やしない。 メロンだバナナだぶどうだ桃だ、いちごの敵は多いけど、春に限っては、冬が終わって葉っぱが元気を取り戻す、この季節に限ってだけ言えば、俺のキングはいちごなのだ。 ストロベリーこそ果物界に君臨するにふさわしい。 俺の愛するシーザー・A・ツェペリという男もそんないちごが大好きで、ジェラートだってジャムだって決まってまずはいちごのものを選ぶのだ。目ざとい俺がそんなもの見逃すわけもなく、恋人の五月の誕生日にはいちごのケーキをプレゼントすると半年も前から決めていた。
――それなのに、この男ときたら! 「JOJO、今度の週末ケーキバイキング行こうぜ!ストロベリーフェアだとさ」 びっしりとケーキの並んだ画像を表示させて、男はピュウと口笛を吹く。いちご好きだろ、とにこにこと笑ってくる恋人にまさかノーだなんて言えるわけもない。 「すごいぜ、ケーキの種類は二十種類はあるそうだ。しかもどれ食っても美味いとレビューも大絶賛!」 「……ワーオ。そいつはハッピーねェン」 声が小さくなっちまったのも仕方がない。 だってそれ、俺が誘いたくってうずうずしてたやつなんだもん。俺の言葉でシーザーがぱあっと幸せそうに笑ってくれる機会が一個つぶれちまった現実に、ポーカーフェイスを作るのは難しい。 そうやって俺がしょんぼりしていると、俺のよくできた彼氏サマはにこにこはしゃいで見ていたスマートフォンをポケットにしまい、どうしたどうしたと慌てた顔をしてくれる。 「どこか具合でも悪いのか?出かけるのはやめといて家デートにするか」 コンビニのいちごスイーツも捨てたもんじゃあないんだぜ、と言ってくる男は、あれやこれやとうんちくを並べる。やれどこぞのパティシエが賞をとっただの、改良された新種の甘みがどうだのこうだの。 だいじょぶ、オーケー、わかってます!そんなの、俺がここ数週間めっちゃがんばって調べたので、ちょっとしたレポート提出できちゃうくらいには知識としては充分なんです! ああまた俺のストロベリー雑学を披露する機会がなくなっちまったぜ、と眉間にしわを寄せて見れば、シーザーは軽く目を見開いてべたりと手のひらを俺の額に当ててくる。 「なんだ、本気で具合悪いのか。めずらしいな、眉間にしわ寄せて。よし、今日は俺が腕によりをかけて甘いモンでも作ってやる。家で食ういちごも捨てたもんじゃねえさ。美味いもん食って、ベッドで寝てろ。おまえを甘やかすことにかけては他の追随を許さない自信があるぞ!」 はは!とシーザーは楽しそうに笑って、けれども俺の髪をかきまわす手のひらからはほんの少し心配そうなおびえを感じる。 俺が病気だからって怪我だからってシーザーは一緒に弱音を吐いたりしない。 けど、俺よりも誰よりも俺の身体を心配するのはこの男だった。言葉や態度に表したりなんて絶対にしないけども。 甘やかすだけ甘やかして、その代わり責任をとるようにして俺を人一倍どやしてくるこの男は、俺に対しての愛情を惜しみなんてしやしない。 「シーザーって実はめっちゃいい彼氏よね……」 ぼそりと漏らした言葉に、男はくしゃっと笑ってみせる。 その笑顔はほんと極上で、俺はもうもらってばかりのこのラブをいつになったら返せるんだと多すぎる愛に押しつぶされそうになるのだ。 俺だって好き好き言ってるのに。 返せるヴィジョンがひとつも見えない! だからこそ、誕生日ってのは重要だった。 普段甘やかされまくってるけれど、この日に限ってはどんだけ愛情こめまくってもお返しは受けつけてませんって胸を張れる。 実はどころか、見たまんま甘いもの大好きイケメンなこいつに、誕生日ケーキは超重要だ。 だからこそ、食べたことのある味よりも、見たこともないようなケーキでストレートにノックダウンを狙っていた。 しかしだめだ。俺の情報網とシーザーの甘い物情報網はほぼ同じ。サプライズはできそうにない。 手作りも視野に入れてはいたが、こいつよりも美味く作れるわけもない。 八方ふさがり、どうしようもない。こいつの誕生日は一週間後。 さァて、ここがふんばりどころですよォ、ジョセフくーん……! うふふと笑顔を浮かべる俺を、シーザーは不思議そうに見つめ返してきてくれる。 ちょっとまだ思いつかないけども、絶対なんとかどうにかして、こいつに『おまえは最高だ!』と言わせてみせるのだ。 そのためにはなんでもしちゃう心意気、結構ずっしりくる重さだけども、きちんと受け取ってくんなきゃ泣いちゃうからな、とまだ見ぬ勝利にちいさくガッツポーズをしてみせる俺だった。
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俺のJOJOは紅茶を淹れるのがとても上手い。
それはもちろんおばあさまの躾けのたまものではあるのだけど、なによりも、愛する家族に愛情を伝える方法の一つとして、幼いJOJOが学ぼうと努力したというその事実がいとおしかった。
真夏の朝、クーラーが切れたうだるような暑さのなか、汗をかきはじめた鼻先にひいやりとしたアイスティーを差し出されると、愛されているなあと嬉しくなる。
朝の弱い俺を置いてベッドから出ていってしまうのは確かにさみしくはあるのだが、顔を洗ったりなんだりの音の隙間にしゅんしゅん湯が沸く音を聞いたり、がりがりと氷を砕く音を聞いたりするのはなんとも言えない幸福だった。
朝もきっちりと胃袋に物を詰める主義の恋人は自分の朝食を用意する片手間に、気が向けば俺への飲み物も作ってくれる。運が良いときは甘い言葉とともにキスまでくれた。
このサービスは昨晩のセックスがよかったという隠喩なのか、それともいい夢でも見たのかと最初のうちは極上のサービスにまたたいていたのだけど、経験を積み重ねた結果の結論は単に気まぐれというだけだった。
俺のJOJOはだからこそかわいい。